心肺蘇生法(CPR)

様々な救急法の中でも心肺蘇生法(CPR)は、瞬時の判断による適切な処置が生命の維持を左右する最も重要な救急法のひとつです。

ファミリーメディカルプラクティスでは、国際蘇生連絡委員会(ILCOR)蘇生ガイドライン に基づいた米国心臓協会(AHA) のプロトコルを採用しています。これは、米国や世界中の医療従事者、会社および医療機関で幅広く使用されている救命プロトコールの基礎となっています。

米国心臓協会が定めた、救命に必須のプロセスである“Chain of Survival(救命の連鎖)”を推奨しています。

●"早期通報"
できる限り早く救急車の要請と応援を求めます。

●"早期心肺蘇生術"(CPR)
できる限り早く胸骨圧迫(できる場合は、人工呼吸も含む)心肺蘇生を行います。

●"早期除細動"
できる限り早くAED(自動体外式除細動器) を用いて電気ショックを行います。

●"早期の二次救命処置 "

できる限り早く医療機関で、心停止後の集中治療を含めた適切な処置を行います。

もし、誰かが倒れて3~4 分以内にCPR が始められ、電気によるショックが8分以内に施された場合、その被害者の生存率は30~40% と言われています。

突然の心停止は様々な国で主要な死亡原因の一つとなっています。

突然心停止は事前の徴候や症状なく突然発生するケースも多く、 心停止は自宅での発症率が高く、特に50〜70代の高齢男性に発症者が多い傾向があります。

突然の病気や事故の際、命を救うためには、救急車が来るまでの間に応急手当を行うことが重要です。特に心臓が停止した場合、周りの人が何もせず、ただ救急車を待っていれば命が助かる可能性はどんどん低下します。命を救うためには、心肺蘇生法)等の応急手当を倒れた直後から実施できるかがカギになります。

心臓病の症状には、動悸、息切れ、胸痛、むくみなどがありますが、狭心症や心筋梗塞の症状として最も注目すべきものは、締め付けられるような胸の痛みです。 呼吸不全の症状は、 労作時息切れ、呼吸困難、喘鳴、チアノーゼ、むくみ、体重減少、ばち状指などです。

以前にCPRを行ったことのない傍観者でさえ、患者に救命援助を提供することに成功することができます。何よりも大切なのは、まずは救急車を呼ぶことです。 それが済んだら、救急車が来るまでに何ができるかを確認します。 道具を使わないCPRは、心停止状態の人であれば誰にでも適用できます。YouTubeなどのビデオをご覧ください。たった数分ですが、これを見るだけでも誰かの命を救えるかもしれません。

1.周囲の安全を確認する。(安全な場所を確保する。)
2.心臓の止まっている人(以下 傷病者)を固い床面に仰向けに寝かせる。
3.反応を確認する。肩をやさしくたたきながら大声で呼びかけても何らかの応答や目的のある仕草がなければ「反応なし」とみなす 。
4.呼吸をみる 胸と腹部の動き(呼吸をするたびに上がったり下がったりする)をみる。確認に10秒以上かけないようにする。 喉に2本の指を当てて、頸動脈の脈(首の2つの主要な動脈)を確認する。 胸の上昇と下降に注意して、同時に呼吸を確認する。 確認は10秒未満で行う。
5.救急車の要請をしてAEDを手配する。
6.医療機関の指示に従って、救急隊に引き継ぐまで、必要な応急手当を行う。
7.胸骨圧迫を行う。(胸の真ん中に、片方の手の付け根を置く。他方の手をその手の上に重ねる。)
8. 胸の真ん中を強く(少なくとも5cm沈み込むように)、速く(少なくとも100回/分)、絶え間なく圧迫する。

注意:救急隊が到着するまでAEDによる解析(電気ショック)と心臓マッサージ(胸骨圧迫)を続けます。傷病者が払いのけるような動作など明らかな回復を示したり、救急隊が来るまでは継続して行い、途中で中断しないでください。

胸骨圧迫(心臓マッサージ)を30回行った後、人工呼吸を行います。胸が上がるのが見てわかる程度の量を1回約1秒かけて吹き込みます。口の中に異物や嘔吐物が見えたときには、指で取り除いてください。 異物除去ができない場合は、心臓マッサージ・口腔内の確認、人工呼吸を繰り返します。

9.分以内に5回セット(胸骨圧迫30回+人工呼吸2回の組み合わせ)を続ける。

人工呼吸ができないかためらわれる場合は、胸骨圧迫のみを行います。

10.呼吸を再確認する。

※脈拍の確認は医療従事者のみ求められているものであり、市民救助者には必要ありません。

11.脈拍はあるが呼吸がない場合は、胸骨圧迫は止めて、 5〜6秒ごとに人工呼吸を続ける。 2分間で20回の呼吸が必要です。

心肺蘇生法の胸骨圧迫の手順 - PAMA プロトコル

心肺蘇生法を行う際、難しいとされるのが胸骨圧迫です。どれぐらいの加減で圧迫すれば良いのか、その加減はどう調節すれば良いのか。この胸骨圧迫の手順を「PAMAプロトコル」と言います。

●Push hard, push fast

(強く・速いテンポ(1分間で100回以上)で圧迫

●Allow chest to spring back up

毎回の圧迫の後で、十分に圧迫を解除する

●Minimize interruptions

途中で止めることなく継続する

●Avoid hyperventilation

過剰な人工呼吸を避ける

胸骨圧迫は、リズム良く行うことが大切です。毎回の圧迫の後で、必ず胸のが元の高さに完全に戻るように圧迫を解除してから、次の圧迫をしなければなりません。中断させてしまうと、蘇生効果が落ちるので継続することが大切です。また、人工呼吸を行う場合は、肺の破裂を防ぐために、息を吹き込み過ぎないようにしましょう。特に子供の場合は注意が必要です。

子どもの心停止は圧倒的に 呼吸原性心停止(溺水・窒息)が多いので、人工呼吸で血中に酸素を取り込ませないと、いかに胸骨圧迫を行っても脳のダメージを防止できません。人工呼吸と胸骨圧迫を組み合わせた心肺蘇生を行うことが望まれます。

●救助者が 1人の場合は、胸骨圧迫 30回と人工呼吸 2回が1サイクルである。救助者が 2人の場合は、胸骨圧迫15回と人工呼吸 2回が 1サイクルである。

●圧迫の深さは、胸部の1/3~1/2の深さ (約4cm)を目安に、しっかり圧迫する。

●子どもの体格に合わせて十分な圧迫が可能であれば、片手で圧迫してもかまいません。
●足底を刺激して顔をしかめたり泣いたりするかで評価してもよい。 反応がなく、かつ呼吸がなければ心停止と判断し、ただちにCPRを開始する。呼吸の確認に10秒以上かけないようにする。
●乳児の場合は、両乳頭を結ぶ線の少し足側を目安とした胸の真ん中を、指2本(中指と薬指)で行います。 圧迫の強さ(深さ)は、胸の厚さの約3分の1を目安として、絶え間なく圧迫します。
●1歳未満の乳児の場合は、 乳児の口と鼻を同時に口にふくむ「口対口鼻人工呼吸法」を用います。 乳児の場合は平時から鼻で呼吸しており、 大人と違って口に息を吹き込んでも空気が入りにくい特徴がある。