ベトナムにおける新型コロナワクチン By Dr. Rafi Kot

ベトナムにおいて新型コロナワクチンが入手できる見込みについて

ベトナムでのワクチン接種の見込みが見えないことから焦りを感じている方々もいらっしゃると思います。しかしながら、これはベトナムだけに起こっている問題ではなく、他のたくさんの国も同じように供給を待ち続けているのです。ワクチンの供給を難しくさせているのは、製造に関係する理由、輸送条件、ワクチン購入の資金の調達(この件に関しては後にWHOがワクチンバンクを設立し、各国の人口15%分に当たる量を供給することを約束した)に起因しています。

多くの患者様よりご質問いただく、どのワクチンがいいのか、ベトナム国内、そしてファミリーメディカルでは(いつ)接種可能となるのか、について現在の状況をお伝えいたします。

‐モデルナ

‐ファイザー/ビオンテック

-アストラゼネカ

-ロシアスプートニクⅤ

上から3つ目までのワクチンは欧米基準の治験(第三相臨床試験)を経て生産されています。我々に影響があると考えられる所見は以下の通りです。

1.モデルナ

高価、販売は政府のみ。つまり、注文は政府の代理として行わなければならない。

モデルナ社のワクチンは1回当たり0.5ml、計2回接種をすることで、現在までに発見されたウィルス株に有効とされている。

B.1.1.7(英型変異種) とB.1.351(南ア変異種)を含む全ての主要なウィルスに対する中和活性の高い抗体を生成した。

この研究では、それまでのウィルス株と比較して、英型変異種に対し、抗体の値に目立った変化は見られなかった一方、南ア変異種に対しては生成された抗体の値がおよそ6分の1に減少した。この値でも必要な値を上回っていて効果があるとしている。輸送の面から見ても実現可能なもので、-20度という他の検査試薬でも利用する低温輸送が可能である。

2.ファイザー/ビオンテック

現状流通しているワクチンの中では広範囲にわたり最も検証されたワクチンと言えるだろう。高価。英型変異種、南ア変異種、そして新しい南ア-英混合変異種にも効果があると言われている。このワクチンの欠点は輸送面である。このワクチンはメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンであるため‐70度の温度で運搬する必要がある。

とても困難であり発展途上国や国土が地理的に広い等、物流がネックとなる国には不向きと言えるであろう。ベトナムにいつ入荷されるのか、そもそも入荷されるのか、は現時点で未定である。

3.アストラゼネカ

イギリスで使用されている主なワクチン。アストラゼネカは英型変異種にも効果があると発表している。南ア変異種に対する効果はまだよくわかっていない。主にイギリス国内の2拠点、他にベルギーとオランダでも生産されている。

現在EU諸国への供給の遅れが深刻であり、アストラゼネカはヨーロッパの工場での製造面での問題を非難しているがEUは他の場所(イギリス国内)の生産分の供給で遅れを取り戻すべきだと反論している。先週の時点では、EUに2021年1月~3月期に納入されるはずだった量より60%少なく納入される見込みであることが報告されている。EU諸国の人口は合わせて4億4800万人である。1月25日の時点で、EUはそのうちの1.92%分しか確保できていない。EUは23億回分のワクチンを発注済みで、その内の4億回分はアストラゼネカより納入される予定である。

ワクチンの輸送は容易で一般の保冷環境(2~8度)で輸送可能である。

2月8日、南アフリカはこのワクチンの効果が低い可能性があるとのことで接種を一時的に見合わせている。ベトナムで南ア変異種はすでに確認されている。このワクチンはベクターワクチンであるため、より適したものに改良されるには時間を要する。今年の秋ごろ、改良版が完成すると言われている。

4.スプートニクV

ガマレヤ国立疫学微生物学研究所によって開発されたベクターワクチンで特に問題はないと考えられるが、世界最初のワクチンのタイトルを獲得するという古い冷戦スタイルを思い出させる政治的議題に巻き込まれた。

英医学誌ランセットに掲載されたロシアのデータに多くの科学者たちはその結果の正確性と見込みに対して疑問を抱いている。

2020年11月9日、ファイザーは第三相臨床試験結果、90%以上の効果を得られたと発表すると、その二日後、ガマレヤ研究所はスプートニクVは92%の効果がある、と発表した。その後2020年11月16日、モデルナ社が95%近い効果があると発表すると、その翌週にはガマレヤ研究所がスプートニクVも実際には95%の効果がある、と発表した。2020年の12月半ば、ガマレヤ研究所第三相臨床試験に参加した23,000人のデータを基に、最終的な見解として、ワクチンの効能を91.4%と発表した。

英国変異種に対する効果はあるとするものの、南ア変異種に対する十分なデータはないとしている。mRNAワクチンと異なり、アストラゼネカと同様、超低温輸送の必要がなく、運搬は容易である。

ロシアの情報筋によると、契約には約50か国が含まれている。アルジェリア、メキシコを含む50ヵ国以上がすでに発注済みであり、6ヵ国は自国での生産も予定している。ジェネリック薬生産のリーダー国であるインドでも第三臨床相試験が行われており、年間1億回分が生産される予定である。

アルゼンチンは、ファイザーワクチンを入手するための交渉が行き詰まり、2020年12月末、アルゼンチン航空のジェット機が30万回分のスプートニクVを搭載し、モスクワから出発した。スプートニクVの購入に同意した2500万回のうち、最初の出荷分となる。

1月、キルギスタン当局は、ファイザーワクチンの輸送に必要な超低温輸送を懸念して、スプートニクVがより好ましい、と述べた。その月、ハンガリーがワクチンの展開が遅すぎるという理由でEUを非難した後、EUで初めてスプートニクVを承認を得た。

(EU当局は、ヨーロッパの連帯を弱体化させたとしてハンガリーを批判した)現在、ベトナムでスプトニークVの導入の可能性に関する情報はない。

上記の情報からも推測されるように、ベトナムにおけるワクチンの普及にはまだ時間がかかりそうであり、今年中旬以降になるのか、もしくは今年中に普及するのかさえ疑問です。もし外国人の方で基礎疾患があり、コロナに感染することはすなわち、命が危険にさらされるリスクが高まる、と不安なのであれば、自国に戻り2回の接種を受け、またベトナムに戻ることも選択肢として考えられるでしょう。接種後も自分の行動に気を付けることが大切です。ワクチンを接種することにより、感染しても発症しないかもしれません。それでも周りに感染させてしまう可能性はあるのです。その為、自分を守る、という意味だけではなく、周囲の人を守る為にマスクは引き続き着用するべきです。